出典:アートメイクギャラリー
アートメイクと聞くと、「おしゃれのため」というイメージが強いかもしれませんね。でも実は、この技術、医療の現場でもとっても大切な役割を果たしているんです。特に、病気と向き合う中で、ちょっとだけ外見に変化があった時、アートメイクは心の支えとなり、毎日を笑顔で過ごすためのお手伝いをしてくれる、心強い存在なんです。
私もアートメイク深く知っていくにつれ、こういったパラメディカルアートメイク(怪我や治療のケアなど医療観点のアートメイク)が患者さんにとって大きな心の支えになっていることを知りました。
おしゃれとはまた違った、大きな心の支え。そんな立ち位置のアートメイクです。
改めてそのことを教えてくれたのが、タレントの梅宮アンナさんです。彼女は、ご自身の抗がん剤治療による脱毛で眉毛がなくなってしまった時に、アートメイクを体験されました。そして、その時の気持ちを飾らずに語っておられます。梅宮さんのこのオープンなメッセージは、多くのがん患者さんや、医療に携わる私たちに、アートメイクが持つ「心のケア」としての大きな可能性を改めて気づかせてくれたのではないでしょうか。
目次
梅宮アンナさんの体験が教えてくれる、アートメイクの温かい力
梅宮アンナさんは、2022年に乳がんの手術を受けられ、その後、抗がん剤治療に臨まれました。抗がん剤治療は、私たちの大切な体を守るために、悪い細胞をやっつけるお薬ですが、その頑張り屋さんの働きによって、髪の毛や眉毛、まつ毛が抜けてしまうことがあります。これは、治療と向き合う患者さんにとって、とてもつらい変化の一つなんです。
梅宮さんも、やはり眉毛が抜けてしまったそうです。彼女は自身のインスタグラムで、眉毛がなくなった時のショックを、「自分に自信が持てなくなった」と正直な気持ちで伝えてくださいました。そんな時、彼女が選んだのが、眉毛のアートメイクでした。
施術後、彼女は「眉毛があるだけでこんなにも気持ちが楽になるのかと驚いた」「自分を取り戻せた気がした」と語っています。鏡に映る自分の顔に、以前のような自然な眉毛が戻ってきたことで、外見への不安がふっと軽くなり、心の中に前向きな気持ちが芽生えたんですね。梅宮さんのこの温かい体験談は、アートメイクが単なる「見た目を整える」だけでなく、「心の光を取り戻す」かけがえのない役割を果たすことを教えてくれました。
抗がん剤治療と脱毛:心に寄り添うケアの大切さ
抗がん剤治療は、がんと闘うための大切な治療法です。でも、そのパワフルな働きが、元気な細胞にも影響を与え、髪の毛が抜けたり、眉毛やまつ毛が薄くなったりすることがあります。
特に、顔の一部である眉毛やまつ毛の脱毛は、人との交流の中で目につきやすく、自分の外見の変化を強く意識してしまう原因になります。
眉毛がないと、顔の印象が大きく変わり、「病気だから仕方ない」と割り切れない気持ちになる方もいらっしゃいます。そうなると、鏡を見るたびに心が沈んでしまったり、人前に出るのが億劫になったりすることも。
社会とのつながりへの不安: 外見の変化は、お仕事やプライベートの活動に参加する気持ちをためらわせてしまうこともあります。特に、これまでおしゃれを楽しんできた方にとっては、その変化が大きな心の負担になってしまうかもしれません。
気持ちが沈んでしまうことも: 心の負担が重なると、気持ちがふさぎ込んでしまうこともあります。治療への意欲が落ちてしまったり、日々の生活の質が下がってしまったりすることもあるんです。
このような心の負担は、治療そのものへの向き合い方にも影響を与えかねません。だからこそ、私たち医療に携わる者は、体の治療だけでなく、患者さんの心にも優しく寄り添うケアがとても大切だと考えています。
医療アートメイクの温かい広がりと、様々な笑顔の物語
梅宮アンナさんの例は、医療アートメイクが持つ温かい力の一部分に過ぎません。最近では、医療アートメイクは様々な場面で、患者さんの心のケアに貢献しています。
1. 乳がん手術後の乳輪・乳頭の再建
乳がんの手術で乳房を切除された方の中には、乳房の再建手術を受けられる方が多くいらっしゃいます。でも、再建された乳房には、乳輪や乳頭がない状態です。そこで、アートメイクの技術を使って、本物そっくりの乳輪や乳頭の色、形、立体感を繊細に再現していきます。
この施術は、患者さんが女性としての自信を取り戻し、ご自身の体を受け入れるための大切な一歩となります。見た目の美しさだけでなく、心からの充足感をもたらし、毎日を笑顔で過ごすためのお手伝いをしてくれるのです。
2. 口唇口蓋裂の傷跡を優しくカバー
口唇口蓋裂は、生まれつき唇や口蓋に隙間がある状態のことです。手術によって治療されますが、その後、小さな傷跡が残ることがあります。アートメイクは、この傷跡の色を周りの皮膚の色に近づけたり、唇の形をより自然に見せるために用いられます。
特に、口唇口蓋裂の患者さんは、小さい頃から外見について悩みを抱えることが多いので、アートメイクによってそのコンプレックスが少しでも和らぐことは、心の成長にとってもとても大きな意味があります。
3. 円形脱毛症や頭部の傷跡を自然に隠す
円形脱毛症は、免疫の働きによって髪の毛が部分的に抜けてしまう病気です。また、頭の手術の後には、髪の毛が生えにくい傷跡が残ることもあります。これらの部分にアートメイクを施し、地肌の色に近い色素を入れたり、短い毛のように見せることで、脱毛した部分や傷跡を目立たなくすることができます。
これにより、患者さんはウィッグや帽子で隠す必要がなくなり、もっと自由に、自信を持って毎日を過ごせるようになります。
4. 白斑のカバー
白斑は、皮膚の色素が抜けて白く見える状態です。特に顔や手の甲など、人目につく場所にできると、患者さんにとっては大きな悩みとなります。アートメイクは、周りの皮膚の色に合わせて色素を入れることで、白斑を目立たなくする効果が期待できます。
5. その他の外傷や火傷の傷跡を優しく包み込む
事故や火傷などによる傷跡も、アートメイクで優しくカバーできる場合があります。傷跡の凹凸は残りますが、色合いを周りの皮膚に合わせることで、目立ちにくくすることができます。
これらの医療アートメイクは、ただ「見た目を整える」だけでなく、患者さんの「心の傷を癒す」という、とても温かい側面を持っているんです。病気や事故によって、少しだけ自信をなくしてしまった心を、もう一度強く、前向きにしてくれる。そんなお手伝いをしてくれるのが、医療アートメイクなのです。
こちらで症例も交えて紹介しています
抗がん剤治療中の眉毛アートメイクが、特におすすめな理由
数ある医療アートメイクの中でも、抗がん剤治療中の患者さんにとって、眉毛アートメイクは特に大きな心の支えになってくれます。その理由をいくつかご紹介しますね。
1. 心の負担を優しく和らげてくれる
先ほどもお話ししたように、眉毛は私たちの顔の印象を大きく左右する大切な部分です。眉毛がなくなると、顔がぼんやりしたり、「病気なんだ」という印象を強く与えてしまったりすることがあります。これは、患者さんご自身の「病人である」という気持ちを強め、心を沈ませてしまうことにつながります。
眉毛アートメイクで、自然な眉毛が戻ってくると、顔の印象がパッと明るくなり、健康的な雰囲気を取り戻すことができます。これは、鏡を見るたびに感じるネガティブな気持ちを和らげ、「私らしくいられる」という自信を取り戻すことにつながるんです。梅宮アンナさんのように、「自分を取り戻せた」と感じる患者さんは本当にたくさんいらっしゃいます。
2. 毎日のちょっとした手間を減らしてくれる
眉毛が抜けてしまった場合、普段のメイクで毎日眉毛を描く必要があります。でも、体調が優れない中で、毎日丁寧に眉毛を描くのは、患者さんにとって大きな負担になってしまうことがありますよね。それに、汗をかいたりすると、眉毛が消えてしまう心配も…。
アートメイクであれば、一度施術を受ければ、数年間は美しい眉毛がキープされます。これによって、毎日のメイクにかかる時間や手間がぐんと減り、患者さんはもっと安心して、そして楽な気持ちで毎日を過ごせるようになります。急な外出や、病院に行く時にも、眉毛を気にすることなく過ごせるのは、本当に大きなメリットだと思います。
3. 治療への前向きな気持ちをそっと後押し
心の安定は、つらい治療を乗り越える上で、とても大切な要素です。眉毛アートメイクによって自信を取り戻し、前向きな気持ちになれることで、治療へのモチベーションを保ちやすくなります。自分の外見が整っているという安心感は、治療に集中するための心の余裕を生み出してくれるでしょう。
4. 周りの人との優しいコミュニケーションを育む
患者さんの外見が整うことで、周りの方々も、もっと自然に、安心して接することができるようになります。眉毛がない状態は、周りに「病人なんだ」という印象を強く与えてしまい、どう接して良いか戸惑う人もいるかもしれません。でも、自然な眉毛があることで、患者さん自身も周りの方も、よりリラックスしてコミュニケーションを取れるようになるはずです。
抗がん剤治療中の眉毛アートメイクは、とても有効な方法ですが、施術を受ける際にはいくつか心に留めておいてほしいことがあります。 抗がん剤治療中は、免疫力が少し下がっていたり、出血しやすくなっていたり、体の状態が普段とは異なることがあります。ですから、必ず、担当のお医者さんに相談して、「アートメイクを受けても大丈夫ですか?」と確認することが大切です。特に、治療のどのタイミングで施術を受けるのが良いか、お肌の状態はどうかなど、お医者さんの専門的な意見を聞くようにしてくださいね。 アートメイクは、実は医療行為なんです。だから、お医者さんか、お医者さんの指示のもと看護師さんが施術を行う必要があります。安易に美容サロンなどで施術を受けると、感染症のリスクがあったり、仕上がりが期待通りにならなかったりする可能性もあります。必ず、医療機関か、医療機関としっかり連携している専門のアートメイクサロンを選んでくださいね。 抗がん剤治療中の患者さんの眉毛は、健康な時とは少し違う場合があります。また、脱毛後の眉毛は、元々の形や生え方がわかりにくくなっていることもあります。ですから、がん患者さんの眉毛アートメイクの経験が豊富なアーティストを選ぶことがとても大切です。事前に施術例の写真を見せてもらったり、カウンセリングで不安なことを質問したりして、納得のいくアーティストを見つけてくださいね。 施術を受ける前に、たっぷりと時間をかけてカウンセリングを受けることが重要です。自分がどんな眉毛にしたいか、どんな色が良いか、今の眉毛の状態、そして治療の状況などを詳しく伝えて、アーティストさんと一緒に、理想の眉毛のイメージを共有しましょう。また、施術の流れや、注意すること、施術後のケアについても、しっかり説明を聞いて理解することが大切です。 アートメイクは、一度の施術で完璧な仕上がりになるとは限りません。特に、眉毛が全くない状態の場合は、何回か施術が必要になることがあります。色素の定着具合や、患者さんの希望に合わせて、数週間から数ヶ月の間隔を空けて、追加の施術を行うのが一般的です。焦らず、じっくりと理想の眉毛を形にしていきましょう。 施術を受けた後のケアも、とっても大切です。施術した部分を清潔に保ち、お医者さんから処方された軟膏を塗るなど、指示されたケアをきちんと守りましょう。適切なアフターケアは、色素がしっかり定着するためにも、感染症のリスクを避けるためにも、欠かせないことです。 抗がん剤治療を受けるにあたり、「髪の毛が抜けるのはもちろん、眉毛がなくなるのは本当に嫌だな」という不安を抱えている方は少なくありません。でも、その不安を少しでも和らげるための一つの方法として、眉毛アートメイクという選択肢があることを、ぜひ知っていただきたいと思います。 治療が始まる前にアートメイクをしておくことで、もし脱毛が始まったとしても、その時の心のショックを少しでも軽くすることができます。眉毛があることで、普段通りの自分に近い外見を保つことができ、「病気と闘いながらも、私らしくありたい」という、あなたの強い気持ちを優しく支えてくれるでしょう。 また、治療中に体調が優れない日でも、アートメイクされた眉毛があれば、メイクの手間を省き、気分を楽に過ごすことができます。これは、患者さんの日々の生活の質を向上させ、治療への意欲を保つ上で、本当に大きな意味を持つことなんです。 もちろん、アートメイクは病気を治すものではありません。でも、患者さんの心にそっと寄り添い、つらい治療を乗り越えるための精神的な支えとなることは間違いありません。 医療に携わる皆様には、抗がん剤治療中の患者さんに対する心のケアの一つとして、眉毛アートメイクという選択肢を積極的に提案していただきたいと願っています。脱毛に対する患者さんの不安な気持ちをじっくりと聞き、アートメイクに関する正しい情報を提供し、信頼できる医療機関や専門クリニックとの連携を深めることで、患者さんの毎日を、もっと笑顔で彩ることができるはずです。 「見た目を整える」という枠を超え、患者さんの尊厳を守り、治療を乗り越えるための「医療」としてのアートメイクの可能性を、これからも一緒に広げていけたら嬉しいです。 この情報が、抗がん剤治療と向き合うあなたの、そしてあなたの大切な人の心の光となることを願っています。1. まずは、担当のお医者さんと相談してくださいね
2. 医療機関や、信頼できる専門クリニックを選びましょう
3. 経験豊富なアーティストを見つけましょう
4. カウンセリングの時間を大切にしてください
5. 何回か施術が必要な場合もあります
6. 施術後のケアも大切に
抗がん剤治療が不安な方へ:眉毛アートメイクという温かい選択肢
医療に携わる皆様へのお願い